皆さん、こんにちは。
「ファクタリング利用者の会」の佐藤です。
2020年から始まったコロナ禍は、我々中小企業の経営者にとって、まさに未曾有の危機でした。
私の営む建設資材卸売業も例外ではなく、取引先からの突然の支払い延期要請が相次ぎ、一時は資金ショート寸前まで追い込まれました。
銀行からの追加融資も難しい中、会社を、そして従業員の生活を守るために私が下した決断が「ファクタリング」の利用です。
本日は、あの時私が何を考え、どう行動したのか、そして単なる資金調達手段だと思っていたファクタリングに、どのような「真価」を見出したのか。
私の実体験を包み隠さずお話しすることで、今まさに資金繰りで悩む経営者の皆さんに、少しでも希望とヒントをお届けできればと思います。
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目次
あの日、突然の危機。コロナ禍が突きつけた建設業界の現実
「佐藤さん、申し訳ないが支払いを待ってほしい」
あれは2020年の4月、最初の緊急事態宣言が出された直後のことでした。
オフィスの電話が鳴り、長年お付き合いのある主要な取引先の社長からでした。
「佐藤さん、本当に申し訳ないが、現場がいくつか止まってしまってね。今月の支払いを少し待ってもらえないだろうか」
その一本を皮切りに、まるで示し合わせたかのように、数社から同様の連絡が続いたのです。
頭をハンマーで殴られたような衝撃でした。
私たち建設業界は、もともと支払いサイトが60日から120日と長いのが当たり前です。
その入金計画を元に、仕入れ先への支払いや従業員の給与、経費の支払いを組み立てています。
その前提が、音を立てて崩れていきました。
数字で見る資金ショートまでのカウントダウン
私は経営者として、常に数字を重視してきました。
「数字で見るのが一番分かりやすいですからね」と、いつも社員に言っている手前、自分自身が目を背けるわけにはいきません。
慌てて会社のキャッシュフロー計算書とにらめっこしました。
- 手元資金:約1,500万円
- 翌月の仕入れ支払い予定額:約1,200万円
- 入金延期になった売掛金:約2,000万円
計算は単純でした。
このままでは、翌月の支払いを済ませた時点で、会社の現金はほぼ底をつく。
まさに、資金ショートまでのカウントダウンが始まった瞬間でした。
なぜ銀行融資では間に合わなかったのか?
頼みの綱だった銀行の厳しい現実
真っ先に頭に浮かんだのは、メインバンクからの追加融資でした。
長年付き合いのある支店長にすぐに連絡を取り、事情を説明しましたが、返ってきた答えは厳しいものでした。
「佐藤さん、お気持ちは察しますが、今、同じような相談が殺到しておりまして…。審査にはどうしても数週間はかかります」
コロナ関連の公的融資制度も始まってはいましたが、情報が錯綜しており、手続きも煩雑で、今すぐどうにかなるものではありませんでした。
銀行の対応は決して冷たいわけではありませんでしたが、火事の現場に、数週間後に届く水では意味がないのです。
スピードが、何よりも重要でした。
「ファクタリングという手があるぞ」仲間の一言が転機に
途方に暮れていたその夜、ある経営者仲間との電話が転機となりました。
私の焦りを見かねた彼が、こう言ったのです。
「佐藤さん、ファクタリングという手があるぞ。俺も昔、助けられたことがある」
正直、その時の私はファクタリングについて、名前を知っている程度でした。
少し怪しいイメージすら持っていました。
しかし、私の経験上、一番信頼できるのは、同じ立場で戦う経営者の生の声です。
「背に腹は代えられない」という心境で、私はすぐにファクタリングについて調べ始めました。
初めてのファクタリング体験談|手数料は「保険料」だった
実際の流れと、取引先への「気まずい」説明
藁にもすがる思いで申し込んだのは、取引先への通知が必要な「3社間ファクタリング」でした。
手数料が安いことが決め手でしたが、これがなかなかの難関でした。
ファクタリング会社との契約には、売掛金の存在を証明するために、取引先の承諾が必要なのです。
電話口で「実は、今後の取引をより円滑にするための財務戦略の一環でして…」と説明するのですが、これが本当に難しい。
今思えば恥ずかしい話ですが、ある取引先には、理解してもらうのに1時間もかかってしまいました。
相手に「この会社、危ないんじゃないか?」と思わせてはいけないというプレッシャーで、冷や汗が止まらなかったのを覚えています。
売掛金800万円、手数料5%(40万円)の意味
最終的に、800万円の売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらうことができました。
手数料は5%の40万円。
通帳に760万円が振り込まれたのを確認した時の安堵感は、今でも忘れられません。
もちろん、40万円という金額は決して安くはありません。
しかし、もしあの時、資金がショートしていたらどうなっていたか。
仕入れ先に支払いができず信用を失い、最悪の場合、会社は倒産していたかもしれません。
失うものは、数千万円の売上と、25人の従業員の生活でした。
そう考えると、あの40万円は、会社と従業員を守るための「安い保険料」だったと、今では確信しています。
コロナ禍で学んだファクタリングの「本当の価値」
この経験を通じて、私はファクタリングの本当の価値に気づかされました。
それは単なる資金調達手段というだけではなかったのです。
価値その1:時間を買う「スピード」という生命線
申し込みからわずか1週間で入金されたおかげで、私は仕入れ先への支払いを約束通りに行うことができました。
これにより、長年築き上げてきた信用を維持できたのです。
中小企業にとって、キャッシュフローにおける「時間」は、まさに生命線です。
ファクタリングは、お金と同時に、未来へ事業を繋ぐための貴重な時間を買わせてくれました。
価値その2:経営者の「精神的な安定」
資金繰りの不安で眠れない夜が続いていましたが、通帳の数字を見た日から、久しぶりに熟睡できました。
「お金の心配がなくなると、不思議と前向きなアイデアが浮かんでくるものです」
これは本当で、守りに入っていた思考が、攻めの戦略を考える余裕を取り戻したのです。
妻からも「最近、顔色が良くなったわね」と言われ、家族にまで心配をかけていたのだと反省しました。
価値その3:銀行融資以外の「選択肢」を持つ強み
この経験で得た最大の収穫は、銀行融資以外の「選択肢」を持てたことです。
それまでは銀行に頼るしかありませんでしたが、ファクタリングというカードを手に入れたことで、経営の自由度が格段に上がりました。
いざという時の選択肢があるという事実は、銀行との交渉においても、精神的な余裕を与えてくれます。
これからの建設業界とファクタリングの付き合い方
平時の備え、有事の武器としての戦略的活用
コロナ禍という緊急事態を乗り越えた今、私の会社ではファクタリングを戦略的に活用しています。
例えば、年度末の繁忙期前の仕入れ資金確保や、大型案件受注時の運転資金として、今では年6〜8回ほど計画的に利用しています。
有事の際の「緊急輸血」としてだけでなく、平時の事業成長を加速させる「栄養ドリンク」としても、ファクタ-リングは非常に有効だと感じています。
業者選びで失敗しないために。私のチェックリスト
「手数料の安さだけで選んで後悔した」という仲間の経営者もいます。
業者選びは本当に重要です。
私の経験から、皆さんにチェックリストを共有します。
- 手数料の透明性:見積もり以外の追加費用がないか?
- 入金までのスピード:最短と最長の日数を確認したか?
- 担当者の対応:親身に相談に乗ってくれるか?業界知識はあるか?
- 契約内容の明確さ:債権譲渡登記は必要か?償還請求権(※)の有無は?
- 会社の信頼性:実績や口コミは十分か?
(※万が一取引先が倒産した場合、利用者が返済義務を負う契約。原則「償還請求権なし(ノンリコース)」の業者を選びましょう)
よくある質問(FAQ)
最後に、皆さんからよくいただく質問に、私の経験からお答えします。
Q: ファクタリングを利用すると、取引先に倒産寸前だと思われませんか?
A: 私も最初はそれが一番の心配でした。
だからこそ、3社間ファクタリングを利用する際は、取引先への丁寧な説明が不可欠です。
「今後の取引をより円滑にするための財務戦略の一環です」と前向きに伝えることで、逆に信頼関係が深まったケースもあります。
どうしても知られたくない場合は、手数料は高くなりますが2社間ファクタリングという選択肢もあります。
Q: 建設業ですが、手数料の相場はどれくらいですか?
A: 私の経験や仲間の話を聞く限り、2社間ファクタリングで8%〜18%、3社間なら2%〜9%あたりが一つの目安でしょうか。
ただし、これは売掛先の信用力や売掛金の金額によって大きく変動します。
複数の業者から相見積もりを取るのが鉄則ですね。
Q: 銀行融資とどう使い分ければ良いのでしょうか?
A: 私の場合は、設備投資など計画的で長期的な資金は金利の低い銀行融資、急な資金需要や入金サイトのズレを埋める短期的な運転資金はファクタリング、と使い分けています。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、両方を上手に活用するのが賢い経営者の選択だと思います。
Q: 赤字決算でも利用できますか?
A: はい、それがファクタリングの大きなメリットの一つです。
審査で重視されるのは自社の経営状況よりも、売掛先(取引先)の信用力ですから。
実際に私の知人でも、赤字の際にファクタリングで急場をしのいだ経営者がいます。
Q: 建設業だと審査に通りやすいというのは本当ですか?
A: 建設業は支払いサイトが長いことが業界の常識なので、ファクタリングのニーズが高いと認識されています。
そのため、建設業に特化したファクタリング会社も多く、業界事情をよく理解しているため、話がスムーズに進みやすい傾向はあると感じています。
まとめ
コロナ禍という暗いトンネルの中で、私が見出したファクタリングの真価。
それは、単にお金を得る手段ではなく、会社を守り、未来への時間を稼ぎ、経営者に精神的な余裕を与えてくれる「生存戦略の武器」であるということでした。
もちろん、手数料というコストはかかります。
しかし、それをどう捉えるか。
私は、倒産のリスクを回避し、事業を継続するための「必要経費」であり「保険料」だと考えています。
資金繰りの悩みは、経営者にとって孤独な戦いです。
しかし、情報を共有し、知恵を出し合えば、乗り越えられない危機はありません。
この記事が、皆さんの会社の未来を照らす一筋の光となれば、これほど嬉しいことはありません。
一緒にこの厳しい時代を乗り越えていきましょう。